秋田の太平箕 春の材料採り(イタヤカエデ)

しなやかな弾力をもち、白い木肌が美しい「太平箕(おいだらみ)」。

5月上旬、この太平箕の職人である秋田市の田口召平さんを訪ね、箕の材料採取に同行させてもらいました。

「かご」の場合、素材となる植物は1、2種類であることが普通ですが、「箕」の場合は、部位によって異なる素材を使い、たくみに組み合わせてつくるのが特徴です。

そのため当然に、複数の素材をそれぞれ別の時期に採取する必要があるわけで、箕の需要の低下とともに作り手の高齢化も目立ってきている現在、ぜひその採取現場を記録しておきたいと思っていました。

太平箕の場合、本体と縁巻きに使用するのは、しなやかで丈夫なイタヤカエデ、編み目の隙間を埋めるためのフジヅル、強度が必要な部分には山桜の樹皮を重ね、縁の芯材には耐久性のある根曲竹を使います。
また、用途や形、時期よっては、ヤマウルシ、シナ、シロヤナギ、サルナシ、モウソウチクなども採取します。

田口さんには、昨年何度かお邪魔させていただいた際に、次の一年間の採取する素材と時期を伺っており、今回は重要な素材の一つ「フジ」採りのシーズンに入るとのことで、同行させていただきました。

フジの場合は、樹皮と木質部の間に、水分が多く含まれる4月下旬から5月上旬くらいからが、採取のシーズン。この時期を過ぎると、うまく樹皮が剥がれてくれません。

また、同じく箕の重要な素材の一つ、「イタヤカエデ」の採取も、夏時期以外であれば可能ということで、今回あわせて見学することができたのでした。

この日はまず、イタヤカエデから。

長年山に入っていると、山の形をみるだけでおおよそ生えている樹木がわかってくるのだとか。イタヤカエデ好む場所に見当をつけたら目を凝らし、葉や幹の色合いで判断していきます。

新緑の季節なら、葉を縁取る赤い色合いが目印。そのような説明を受けてから山を見渡すと、遠くからでもどこに生えているのか見分けることができました。

この日に選んだのは、直径15センチほどの イタヤカエデ。陽が多く当たる南面に、苔のような地衣類がついているとよい材料である可能性が高いのだそう。

よい材の条件は、節が少なくできるだけまっすぐに生えているもの。数本が株となって生えているものを選んで切ってあげれば、木全体のダメージも少なくてすみます。

ちなみに、南面は樹皮の色が濃く北面は色が薄いので、例え道に迷っても木々を観察することができれば、方角を知ることができるとのことでした。

しかし、イタヤカエデの採取の難しさは、外目ではわからない内側の状態。ねじれがあれば、箕やカゴの材として使用できないが、それはたとえ名人でも中身を見ないことにはわからない。切ってみて中央に芯があれば、まっすぐ成長している良い材料となります。

いつもお邪魔している工房の中では、なかなか聞くことができない山仕事の話。この日は、聞けば聞くほど出てくる田口さんの山の知識に目からうろこの連続でした。

イタヤカエデの採取は、もともと場所の見当がついていたこともあり、 わずか1時間ほどで作業を終了することができました。

次は、フジの樹皮の採取に続きます。