会期:12月13日(火)〜25日(日) *12/19休
主催:SLOWART
ポーランドの東北部、リトアニヤやベラルーシとの国境近くにあるヤノフ村。自給自足の生活をする人も多くいるという、田舎の小さな農村です。
この地に古くから伝わる絵織物は、母から子に受け継がれる嫁入り道具であり、冬場の貴重な収入源のひとつでもありました。
飼っている羊たちの毛を紡ぎ、染め、織るという、気の遠くなるような手仕事を経て完成する織物は、「二重織り」という独自の技法で織られています。
二重に張った経糸の間にスティックを入れて絵柄になる部分をピックアップし、緯糸を通すことで模様を作りますが、これがなかなか大変な作業。ひとつでも間違えると、横糸を抜いてもう一度模様を拾い直さなくてはなりません。
しかも、あらかじめ用意した図面や下絵はなく、図案はすべて織り手さんの頭の中にあるというから驚きです。
織られているのは、森の木々や動物、教会や風車、聖歌隊、雪遊びをする人など、ヤノフ村の素朴で美しい風景。
童話の中の世界のように感じますが、そこに写しとられているのは、今も自然とともに暮らすヤノフの日常です。紙に絵を描くように自由に織られたモチーフからは、織り手さんの暮らしぶりがうかがえます。
今回の企画展で紹介する織り手さんは9名。織り手の数だけ模様があり、その数は増え続けていますが、すべての人が織るのが伝統柄である幾何学模様や植物柄です。
なかでも村いちばんのベテラン、テレサさんの織るクラシカルな作品は圧巻。今回の展示にも18世紀から続く古典柄「葡萄のつる」をモチーフにしたテレサさんのタペストリーがあります。恒久平和を表す「葡萄のつる」をメインに、ところどころにいる小鳥たちにテレサさんの遊び心が垣間見える、なんとも可愛い作品です。
自然と伝統文化の真ん中で、熟練の織り手によって作られるヤノフ村の絵織物。歴史や村の物語、織り手さんの愛情が詰まった温かみのある作品を、ぜひご覧ください。