フランスのかごの作り手の一人である、エミリー・ルイヨンさんにお話を伺ってみました。
フランス南東部、ロワール川沿いの小村にアトリエを構えるエミリーさん。
伝統的な技法や形をベースに、シンプルな美しさ、そして現代の暮らしの中での使いやすさを意識しながら、とても端正なかご作りを実践している作り手さんです。
◆ かごづくりにおいて大切にしているのはどんなことですか?
私自身は、『規則性』と『仕上げの作業』をとくに重視しています。
また「良いかご」とは、熟練した技と同じくらい、心を込めて作られたものだと考えています。何よりも、買われた方や、贈られた方に喜びを感じてもらえるかごを作りたいと考えながら製作しています。
かご作りの仕事は、私にとっては環境と調和するための手段です。
そして、[伝統と創造] [シンプルさと技巧] [強さと柔らかさ] [環境と経済] など、相反する価値観の間で絶妙なバランスをとり続ける『生き方』だと感じています。
天然素材のかごは決して無駄になることはありません。その役割を果たし終えてもなお、堆肥や燃料となって尽くしてくれます。現代のニーズに応えながらも、将来の世代に負荷をかけることのないこの仕事に、とても意義を感じています。
◆ 現在の目標・将来像は?
目標は、自分の環境に対する信念にできる限り近づくことです。
意味があると思えるものを製作し、その意味を伝え続けたいと思っています。
◆ 気候変動の影響などはありますか?
はい。ヤナギ細工に関して言えば、枝の発色に変化が出ています。雨の少ない年には枝が脆くなりがちです。
一方で、気候変動によって、私たちの日常の欲求や消費活動に対して疑問が投げかけられるようになり、かご細工への関心は再び高まっていると感じます。
◆ 日本のお客様にメッセージはありますか?
日本の皆さん、フランスのかご編みの伝統を大切に思っていただきありがとうございます。世界各地のかご、そして日本のかご細工に対して、敏感な感性をお持ちの皆さんに感謝しています。
すべてのかごは、未来の社会でも必要とされる力強い価値を、私たちに伝えてくれています。作ること・買うこと・贈ることは、かごに意味を与え、喜びや希望につなげる行為だと私は思っています。
<エミリー・ルイヨンさん プロフィール>
学生時代には法律を学び、当初は大学に勤務。その後、自然にかかわる仕事に就くために、山岳ガイドと環境教育の資格を取得。ネイチャーガイドとしての活動をきっかけにかご作りの道に。国立の柳細工訓練校で技を身につけたのち、2009年にアルデーシュ県に工房を構え、以来、自然豊かな環境の中で創作活動を続けている。