茨城県・行方市の竹細工職人、勢司恵美さんによる5年ぶりとなる企画展がはじまりました。
良質な真竹の産地でもある地元の竹林で、竹を伐り、運び、洗い、割り、ひごにする。全ての工程を自身で行っている、数少ない女性職人のお一人です。
大分・別府で竹細工の技術を学び、地元に戻って10年以上。これまで、九州の技術を基にしたかごづくりを中心に行ってきましたが、今後は地元・茨城に伝わる技術で、伝統的なかごづくりも受け継いでいきたいと、今回ははじめて「茨城のかご」も力をいれて制作いただきました。
同じ真竹でも、九州のものと茨城のものではしなやかさやねばりなど、素材としての性質が異なると勢司さんはいいます。例えば、茨城の竹を使って、九州の特殊な編み方で仕上げようとする場合に、「素材と技法がマッチしていない」と感じることも多いのだそう。古くから地元の竹細工職人たちが手掛け、地元の人々に使われてきた竹かごは、知れば知るほど技法も用途も合理的で「無理・無駄がない」ことに気づかされていったそうです。
また今回は、地元の師匠・吉田平さんの竹細工も共に並んで販売できることとなりました。山菜かご、肥料かご、魚かご、鶏かご、、、昭和8年生まれ、この道一筋の竹細工職人が手掛けるかごは、この土地の暮らしに欠かせなかった道具、みごとな機能を備えた竹籠ばかりです。
展示スペースでは、勢司さんが吉田さんより引き継いだ地元の「鯉のぼり玉」も設営!
毎年5月のこどもの日、地元の業者さんの発注を受けて製作する鯉のぼりの「玉」は、屋根よりずっと高い全長10数メートルに設営されるのだそう。
吉田さんとのつながりを、勢司さんはこんな風に紹介してくれました。
「歳は離れていますが、同じもの、竹をやっているので、話はつきません。
師匠でもありますし、本当のおじいちゃんのように気さくに気を使わずにいれる感じでもあります。先輩で竹仲間。でも、一言となれば、師匠がわかりやすいですかね。」
「たまーにふらっとやってきて、『仕事してていーがら』と言われながら、時たま『そーやってやんのかー』とか、私も手を動かしながら、あーだこーだと喋っている時間は、なんだか嬉しく、楽しく、幸せな瞬間だと思っています。」
そんな職人二人が並んだ様子も、この展示を通して感じていただけたらと思っています。