こんにちは。
先日は、岡山に移住した知人の訪問をきっかけに、
同県各地のかご文化をめぐる旅に行ってきました。
岡山には、真竹やいぐさ、ガマを使用した編組品があります。
今回は、それぞれの地域を訪ね、製作の工程を見学してきました。
はじめに訪れたのは、北部に位置する蒜山(ひるぜん)。
鳥取との県境にほど近い、ガマ細工の産地を訪ねます。
「晴れの国」で知られる岡山ですが、ここは西日本有数の豪雪地帯!
訪問時の気温は氷点下、積雪も70cmほどあり、一面の雪景色が広がっていました。
寒かった屋外から、工房に入ると、地元の女性達4人が集まって
作業をしていました。
ガマ細工とは、材料となるヒメガマにシナノキの小縄で編みあげた伝統工芸品。
一説によれば、その歴史は600年以上続いているといわれています。
ガマ製品は防水性に富み雪を防ぐため、この地域では欠かせない必需品でした。
積雪の多い地域では欠かせない、雪靴、蓑や笠などから、
背負いかごや弁当かごなど、さまざま生活の道具が生み出されてきました。
わら細工よりもさらに軽く、あたたかいことも特徴の一つ。
素材自体に艶があるので、見た目の美しさも兼ね備えています。
作り手の女性の一人は、「ヒメガマは油分があるから、ずっと手作業をしてても
肌がつるつるなのよ。」と笑って教えてくれました。
そして、ガマ細工の出来栄えを大きく左右するのが、小縄作りです。
シナノキはこの土地で、「ヤマカゲ」と呼ばれ、初夏から約四か月の間、
水に浸けて外皮を腐らせ、繊維を取り出しやすくします。
薄い皮を取り出し、細く裂いてから、ようやく縄づくりの作業へと移ります。
作業中にいろいろ質問をしていても、その手は止まることがありません。
ここちよく響いていました。
編み終えると、いよいよ仕上げの段階に。
筒状にしてあわせた個所を縄で繕い、底部分と持ち手を付ければ完成です!
今回拝見した作業は、たいへんな下準備をしてきた長い期間に比べると、
ほんの一部分。
湿地帯に自生するヒメガマは、年々少なくなってきており、刈り取り作業も
すべて女性たちだけで行っているとのことでした。
来年の秋の収穫時は、ぜひ助っ人としてお手伝いすることを約束し、
到着時より雪が深くなったこの場所を、後にしたのでした。
征一郎