こんにちは。
お盆の時期に入り、日常とは異なる場所で過ごしていらっしゃる方も
多いのではないでしょうか。
私はといいますと、7月末からの約二週間、かごの産地をたずねて
フランス、そしてモロッコの小さな村を旅してきました。
フランスは2度目の訪問となりますが、今回の旅でも、
都市部でも地方でもさまざまな場所で、地元のかごが身近に
使われている様子を見ることができました。
もちろん昔に比べると、それなりに高価なものとなりつつありますが、
今なお欠かせない暮らしの道具として、フランスの人々に深く定着
しているのが感じられました。
しかし、生産者側から見てみると、現状は大きく二極化していること
がわかってきました。
多くの職人を抱え、幅広いニーズに対応できる、かごづくりで有名な
地域がある一方、昔とほとんど変わらぬ伝統的なかごをつくっている
地域では、わずか1、2名の職人が残るのみといった状況が広がって
います。
そのようなわけで、今回のフランス訪問は、後継者不足が深刻に
なりつつある、ブルターニュ地方の職人さんにお会いするのが
一番の目的でした。
フランス北西部、独自の文化が色濃く残るブルターニュ地方。
ケルト民族を祖先に持ち、かつてはブルターニュ王国を築いて
繁栄し、独自の言語と民族文化が受けつがれている土地です。
海と森の恵みゆたかなこの地では、昔からさまざまなかごが
作られ活躍してきましたが、中でも特徴的なものの一つが、
「牡蠣のかご」です。
海辺での牡蠣やウニ拾い、それから小さな魚を並べて売るにも
便利なように、浅い横長の作りになっているところが特徴です。
頑丈な実用のかごにもかかわらず、なんとも美しいシルエット。
製作者のエリセさんにお会いして、いろいろとお話を伺ってきました。
製作する上でもっとも難しい点を聞いてみると、意外な答えが
返ってきました。それはかご編む前、ヤナギを柔らかくするために
かごの短い辺に沿わせて、マクレルがぴったりはまる形になっており、
とてもきれいに見えるそう。何よりも、プラスチックなどのかごに比べ
魚が傷みにくく、新鮮さが長持ちするそうです。
それをよく知っている地元の人たちは、つくりのよいかごに並んだ魚を
選んで買うために、魚売りたちの商売にとっても大切なものだったそうです。
エリセさんから聞く、かごの話の一つ一つは、すべて合理的な理由や
歴史的な背景があって、とても興味深いものでした。
そして、それは決してエリセさんだけの知識と経験だけでなく、
この土地をずっと離れず代々かご職人を受け継いできた、家族の歴史
そのものなのだと気づかされた訪問となったのでした。
(ブルターニュのかごはこちら→☆)
いとう