スポンコリのかご職人
ビョルン・マヨーシュさんのこと ②
記事と写真:オオロラノート
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ビョルンさんは、松の木のスポンコリのほか、柳や白樺、ナナカマドなどの木から、バターナイフやまな板、曲げわっぱのパン入れなど暮らしで使う木工品も作っています。
スポンコリに選んでいる松の木は、ダーラナ地方の北でゆっくりと育った樹齢150-200年くらいのものだそうです。曲げわっぱに使われているのは、主に柳の木。柳は、人と森の境目あたりに好んで生えているのだそうで、あのあたりに生えているな、とあたりをつけておいて土地の所有者に相談し、伐採することがあったら譲ってもらえるようお願いするんだとか。
春になると真っ先に花をつける柳の木は、森に住む昆虫達にとってはとても貴重な木です。そのため、春先には取らないのだそう。
ビョルンさんのものづくりを見ていると、人は自然のサイクルの中にいて、森のめぐみを受け取っているんだということを改めて感じさせてくれます。
シリヤン湖の北にある ヴォムヒュース(Våmhus)という村は、スポンコリの深い文化が生まれた場所の一つと言われています。当時、作り手達は村から村へと移動し、その土地の松の木からかごをつくり、行商して生計を立てていたそう。よい木のありかはその土地の木こりに尋ねたのだそうです。そうやってかご職人たちは村から村へ移り、美しいかごを作り出していきました。
最近はスポンコリ用の良い松の木を見つけるのが難しくなってきているそうです。また、ビョルンさんのように工房兼店を構え毎日かごを本職として作っているスポンコリ職人さんは、スウェーデンでもごく僅か。おそらくこの先無くなってしまうかもしれない、文化価値の高い工芸の一つであることは確かです。
日本でもスポンコリはここ数年で人気を得ている北欧のクラフトの一つだと思います。しっかりとした松の木で作られたスポンコリは、普通に使っていれば何十年も持つものです。
スウェーデンでは不要になったら物を売り買い出来る個人のサイトや、蚤の市やアンティークショップなどで売り買いされたり、親から子に受け継がれながら、古いものを大切にする習慣があります。
私の事務所で使うスポンコリはアンティークショップのオーナーさんが大切にしていたものを譲り受けたもの。フタがついているので、細々としたものをささっとしまえて重宝しています。
ビョルンさんのかごは、うちに来た最初の頃は、ゲスト用にバスタオルとハンドタオルをセットしてベッドに置いて使っていました。今は息子のおもちゃ入れとして使っています。
最近ビョルンさんのお店で購入したのは、大きな洗濯かご。将来、息子が受け継ぐ頃にはもっと飴色に美しくなっていてくれること、今から楽しみです。
スウェーデンの美しい手仕事が、この先ずっと私たちの暮らしの中にありつづけていてくれることを願っています。
※カゴの収益は、aurora.noteの活動の一部にあてられ、そのうちの一部はスウェーデンの森の生物学的多様性を守る活動をしている非営利団体に寄付されます。