からむし織をめぐる旅

こんにちは。
ここ数日の東京は、夏の様な暑さが続いていますね!

しかし、先週の三日間を過ごした福島県の昭和村では、
まだ残雪や桜の花も残っていて、初春のような季節でした。

昭和村は、またたび笊などの編組品づくりがとても盛んな土地。
農閑期の手仕事の性格から、かごづくりは冬時期が中心となります。

それでは、今がどんな時期かというと・・・、田植えなどの農作業に
とても忙しい季節で、村のいたる所でこのような美しい光景が見られるのでした。

今回の旅の目的も、かごではありません。

昨年の冬に訪問した際、「寒晒し(かんざらし)」の作業を見学した
「からむし織」について学ぶためなのでした。
(この時のブログは→ )

すべての行程で、とても手間のかかるこの織り物のことを知り、
一度、今の時期にも、訪れてみたかったのです。

「からむし」とは、イラクサ科の多年生植物で、別名で「苧麻(ちょま)」ともいいます。
昭和村は本州では唯一の生産地。

6百年ほども昔から、高品質の原麻を生産・供給してきました。

ちょうどこの時期は、「焼畑」の時期。
焼畑を行うことで、からむしの成長と品質を均一化させる効果があり、
同時に、害虫の駆除、残った灰が肥料になるなど、とても重要な作業です。

今回、焼畑を取材させていただいたおばあちゃんは、今年で76歳。
なんと7歳の頃には、すでに作業の手伝いをしていた! というから、
かれこれ70年近いキャリアの持ち主です。

雑草を取り除いた畑の全体に、ワラを敷いてよく乾燥させます。
乾ききった夕方過ぎに火を点けると、わずか数分で炎が広がって行きました。

 

 

焼け残ったからむしの芽。
すぐに畑全体に水をかけていきます。

そしてその後は、「施肥」という作業に移ります。
全体に有機肥料を蒔き、その上にふたたびワラを敷き詰めていくのです。

これにより乾燥を防いで、雑草をあとから生えにくくする役割があります。
化学肥料はからむしに不向きで、繊維の質が悪くなってしまうことから
使われません。

とてもデリケートな植物であることが伺えます。

肥料は地域や家庭によって、それぞれ
異なるものを使用しているそう。
つづいてまんべんなくワラを敷きつめていきます。
黄金色のワラがうつくしい

この規模の畑で、収穫できる原麻は約250-300匁(もんめ)ほど。
100匁は約380gですから、全体で1kg前後の量です。

そして、取引される価格は原麻の質で決まるといい、最上級の場合は
100匁で1万円強、並みの評価の場合、約半分の値になってしまうということでした。
たいへん手間のかかる作業にもかかわらず、手にできる現金は決して
多くはありません。
そして、夏の収穫、秋の糸づくりが控えており、仕事はまだまだはじまったばかり。

これまで、かごがつくられるまでの行程は何度となく見てきたつもりですが、
このからむし織が生み出されるまでにかかる、手作業の多さに驚きました。
代々育ててきた、からむしの根っこを大事に保管し、畑を耕し、
良質の農産物として育てるところからスタートするのですから。

今日の取材はここまで。
明日は、畑の囲いとなる、「垣作り」の現場を見せていただきます。

征一郎

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