栃木・鹿沼箒の工房を訪ねて

先週末、栃木の伝統工芸品「鹿沼箒」の職人である丸山早苗さんの
工房を訪ねてきました。

籠と箒。
素材や用途、技法は異なりますが、身近な植物を利用し、編む作業を加えて

道具に仕上げる点では、お互いに似た性格をもつ手仕事の道具と思います。

特に、丸山さんは鹿沼箒の製作だけではなく、通常サイズの箒としては
使用できない部位を、小さな箒づくりに利用したり、先代が創案したという
十二支をモチーフにした郷土玩具の「きびがら細工」を手掛けるなど、
貴重な素材を余すことなく使う、といった点でも工夫を重ねておられる方で、
いちど詳しいお話を聞いてみたいと思っていました。

蛤(はまぐり)型と飛び出した「みみ」部分が
鹿沼箒のおおきな特徴です

実際に話を伺ってみて、素材となる材料の確保や後継者不足などの
問題についても、カゴ作りと多くの共通点がありました。

きびがら細工は、鹿沼箒職人であった
故・青木行雄さんが昭和37年に創案。
丸山さんの祖父であり、師匠である方です。

今回伺った話の中でも、特に印象に残ったのは、
『 工芸士として繋ぐべきものは、技術や伝統だけではありません。
代々受け継いだ土地を、きれいな状態で次の代に残していくことがとても
大切だと思います 』、という言葉でした。

出産を経験してまもなく、先代のおじいさまの後継者となることを決意。
その後、子育てをしながら、職人としての修行を続ける暮らしの中で
東日本大震災を経験し、その思いはさらに強くなったそうです。

現在は、地元の信頼できる農家さんとともに、無農薬・無化学肥料による
箒草の栽培に取り組み、年に一度の収穫期には、放射線測定検査も
行っていました。

土地と工芸のつながりを大切にし、次の世代によりよい環境を残すため
の活動をまっすぐにすすめている丸山さんの姿は、同世代の子を持つ
自分自身にとっても、おおきな刺激になりました。
来夏は、栽培地も見学させていただく約束をして、工房をあとにしました。

丸山さんが毎年製作できる「鹿沼箒」の本数は、わずか15-20本ほど。
箒づくりに必要なやわらかくてコシがある素材は、毎年の収穫量によって
左右されるため、現在は受注生産のみ行っているそうです。

「きびがら細工」は、後日当店用にも製作いただけることとなりましたので、
またその時に詳細をご紹介できればと思っています。

そして、今後のきびがら工房・丸山早苗さんの活動にもぜひ注目ください!

いとう

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