森の素材から生まれるポーランドの多彩なかごの中でも、いまは作る人がほとんどいなくなってしまった貴重なかごの一つに出会うことが出来ました。
さわやかに香るスプルースの枝に、マツの木の根を組み合わせた珍しいかごを作っているのは、アレクサンダーさん。2019年にお会いした時、84歳とのことでしたがとてもお若い印象!
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アレクサンダーさんが作っているのは、東~北ヨーロッパに多くみられる形、コロンと丸い、持ち手付きのかごです。赤い実をたっぷり入れた古いかごにを手に、にこやかに出迎えてくれました。
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早速素材採りに。マツの木の細い根には、しなやかでとてもつよい繊維が含まれていて、かご素材にはうってつけですが、掘りだすのは重労働です。アレクサンダーさんはいつも、近所にある砂地の森で採取をしているそうです。たしかに堅い土よりは掘りやすそうですが、それにしても力のいる作業です。
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かご1個つくるには、これよりもう少したくさんの根っこが必要です。
つぎに登場したのは、細い木の板。さまざまな太さの穴が開けられています。
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掘りたての根を、太さに合った穴に通して引っぱると、表皮がするするとむけていきます。
水分が抜けないうちに、すべてをすばやくはぎ取る必要があります。
なんともいえないさわやかな香りが、あたりにさっと広がりました。
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スプルースの細い枝を骨組みに、根はその間をかがるように通していきます。
リクエストに応えて、大切な民族衣装を出してきてくださいました!
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広い庭には、牛小屋や養蜂の巣箱もあり、かご以外のお仕事にも忙しいアレクサンダーさん。
ポーランドの森に囲まれた暮らしのなかで、長い間使われてきたこのかごをご紹介できることを、うれしく思っています。
この旅の実現のために力を尽くしてくれたポーランドの団体「セルフェンタ」にも、この場をお借りしてお礼申し上げます。