2017年も残りわずかとなりました。
今年を振りかえると、年始に富山・氷見の「藤箕」についての冊子製作に
関わらせていただいたり、この秋に開催された「箕サミット」参加に
声掛けいただいたり、「箕」の文化継承について考える機会の多い一年でした。
数百年分の知恵の結晶、ともいえる箕づくりの技を残すにはどうしたらよいのか?
いろいろな方とともに考える中で、秋田の太平黒沢地区で箕づくりを専業
としてきた最後の職人、田口召平さんにも出会うことができました。
太平黒沢の「太平箕(おいだらみ)」は、イタヤカエデにサクラの樹皮を
組み合わせた、国内でもっとも美しい箕のひとつではないかと思います。
その技は、秋田市の太平黒沢地区に、江戸時代の中頃から受け継がれてきました。
昭和20~30年代の最盛期を知る田口さんは、箕作りに必要な高い熟練の技と、
箕全般についての広く深い造詣をもった方です。
今回は、貴重な太平箕を製作いただくと同時に、田口さんご自身も箕づくりの
伝統を残すための手段のひとつと考え、いろいろな形を試作されてきたという
「かご」の数々も、あわせてゆずっていただきました。
箕作りの技を応用して作られたこれらのかごは、イタヤカエデと他の素材との
組み合わせが特徴的。縁部分には、サルナシやヤナギ、竹などの素材、本体には
山桜やシナの樹皮を組み合わせたものなどもありました。
イタヤカエデのかごの産地としては、同じ秋田県の角館が知られていますが、
素材の個性を活かした力強い作りは田口さんならでは。
中には、製作してから数年経過し、色合いが濃くなったものもありますが、
どれも味わい深く、独特の雰囲気があります。
今回写真を掲載しているこちらの「かご」については、ぜひみなさまの
ご意見ご感想もお聞かせいただければ幸いです。
直接、田口さんに報告させていただき、今後の取り組みについて
参考にしていければと思っています。
太平箕は、角館町のイタヤ箕とならんで「秋田のイタヤ箕製作技術」として、
国の重要無形民俗文化財に指定されていますが、どちらにも次世代の後継者が
いないのが現状です。
「本気で習いたい人がいるなら、自分が知っていることはすべて伝えたい」
田口さんのこの言葉が、今も深く印象に残っています。
そして、後継者となる方が現れたときに、当店も何かしらお手伝いができるように
今後も関わっていきたいと考えています。
一年の終わりに、福をすくいとる縁起物としても愛されている箕。
今年のおわりに、この田口さんの箕とかごをご紹介できることをとても
うれしく思っています。