倉敷・須浪亨商店の5代目がつくる「いぐさのかご」

先週は、岡山の倉敷を訪れていました。
今から二か月ほど前のこと。とてもうれしい連絡があったのです。

倉敷で130年近い歴史をもつ「須浪亨商店」は、国内で唯一の
「いぐさかご」の生産を行っています。

しかし、その作り手さんといえば、ご高齢のおばあちゃんがただ一人の状況。
ぼくは年に一度、その工房にお邪魔しているのですが、熟練の手業により
次々とかごを編んでいく作業を間近で見れるのを、毎年楽しみにしていました。

専用の折り機を使用します
 

 縁と持ち手はすべて手作業。
冬場は特に、たいへんな作業です。

その時に、何度かお会いしていたのが、お孫さんである隆貴さん。
昨年までは、デザイン学校に通う学生さんでしたが、今年の秋のはじめに
「祖母の跡を継ぐことを決断しました」と手紙で報告をしてくれたのでした。

5代目となり、すこし大人の表情を見せる隆貴くんと、あれこれ心配しつつも
うれしそうに見つめるおばあちゃんの姿は、とてもほほえましいものでした。

 

須浪亨商店の「いかご」の伝統を、今日まで守ることができたのは、
隆貴さんの祖母である栄さんの努力によるものでした。

3代目だったご主人は、ご高齢もあってしばらく前に引退しており、
4代目として活躍していた隆貴さんのお父さんは、早すぎる年齢で
世を去られてしまいました。
一時は廃業も考えたという栄さんでしたが、その後も時間を工面
しながら「いかご」の製作を続けていきました。

昔と変わらぬ佇まいを残す、栄さんの「いかご」は、地元だけでなく、
全国からも注文が寄せられる人気がありましたが、体力的にも年々
きびしい状況になりつつありました。

そのような中、もともとモノづくりが好きで、デザイン系の
専門学校を卒業したばかりの隆貴さんが、おばあちゃんの技を学び、
跡を継いでいくことを決意したのです。

新たに5代目となった隆貴さんのいかごと、今後の活動に
ぜひご注目いただければと思います!

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