カゴアミドリ

               

ヤナギのこと -エイドリアンさんに伺いました-

イギリス・ノーフォーク地方出身のかご職人エイドリアンさんとは、かれこれ12年ほどのお付き合いとなります。

昨年2024年には初めて日本を訪れ、カゴアミドリの国立と松本、両方の店に足を運んでくださいました。

松本店にて。自作のかごを手にするエイドリアンさん

 
エイドリアンさんが手掛けているのは、ヨーロッパの伝統的な技法で作られる、強く美しい暮らしのかご。みずから育てたヤナギの天然色を生かした、渋みのある色使いも特徴です。

そこで今回は、ヤナギの栽培について詳しくお聞きしてみました。

* いまは何種類くらいのヤナギを育てていますか?
* 品種によって、色だけでなく性質の違いもあるのでしょうか?
* 無農薬栽培とお聞きしていますが、気候変動の影響はいかがでしょうか?

 
エイドリアンさんからのお返事をご紹介します。
 
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-ヤナギの品種について-

私たちは現在、15種類ほどのヤナギを育てています。

以前はもう少し多かったのですが、この数年の水不足で、幾つかの種類は枯れてしまいました。

今育てているのはより水不足に強い品種で、ありがたいことに、それでもまだ多くの選択肢があります。

 
ヤナギは、品種ごとに、固くて高密度で丈夫なもの、柔らかく浸水時間は短いけれど折れやすいもの、など、それぞれ性質の違いがあります。

かごのどの部位にも使える便利な品種もありますし、そうでない品種でも、特定の部位に使用して強度を出したり、カラーバリエーションを加えたりと、さまざまな用途があります。

基本的には複数種を組み合わせるのがベストだと、私は考えています。それぞれの長所を引き出せるように考えながら、組み合わせていきます。

様々なヤナギが並ぶ、石造りの工房。

 
私のお気に入りのヤナギをご紹介しましょう。

<Black Maul>
イギリス種。広く使われている品種で、どんなものでも作れます。それほどカラフルという訳ではありませんが、おそらくヤナギの中で最もオールラウンドな品種です。

<Dickie Meadows / Dark Dicks>
イギリス種。まっすぐで固く、浸水には時間がかかります。ダークグリーンの色あいが印象的。

<Wissender>
イギリス種。太めでとても曲げに強い、ライトグリーンのヤナギ。ログバスケットやクランバスケットなど、大きなかご作りに適しています。

<Bordiala>
フランス種。色味はオレンジ〜赤。曲げに強く、折れてしまうということがほとんどない品種です。フランス・ペリゴール地方のかごに最適。

<Helix>
フランス種。とても細くライトグリーンの地に濃色のまだら模様が特徴的。フルーツバスケットなど、小さめのかごに少し混ぜるとハッとするような変化を出してくれます。

<Packing Twine>
アイルランド種の美しいヤナギです。縁編みに適した性質で、乾くとほとんど黒に見えます。

その他にも様々な種類がありますよ。

左から、Dickie Meadows、Jaune de Falaise、Faucille、Nigricians。
右側の2種類はその後、雨不足で株が枯れてしまいました。

ヤナギは、編む前に数日~数週間かけて、専用の槽で浸水させます。


ヤナギの表皮をはぎ取るための昔ながらの道具



 
-栽培について-

ヤナギの栽培は無農薬で行っています。そのため、生育は母なる自然に左右されることになります。

気候変動の影響なのか、この数年は水不足がひどく、いくつもの株が枯れてしまいました。もちろん天候の良い年には害虫も少なく、良い収穫が得られることもあります。

自宅に隣接するヤナギ畑。

 
また同じ品種でも、畑のあちら側とこちら側でも生育状態がちがったり、土壌のコンディションや、刈り取り後に天日干しするか・日陰干しするかなどによっても、発色が変化します。

ヤナギを育てる仕事は、それ自体がアートだと感じます。

私は栽培の専門家という訳ではありませんが、1997年から自分の制作に使用するヤナギは自分たちの手で育ててきました。ヤナギを植えるところから、一つのかごが完成するまでの、長い工程の全体に関われることには大きな満足感があります。

年齢とともに農作業はきつくなってきましたが、私たちはこの循環する仕事をとても楽しんでいます。


それでは良い1日を。花の季節を楽しんでください。

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