北海道・二風谷は、道内でもアイヌの人々の暮らしが今も色濃く残っている土地。
二風谷を訪れると、アイヌ文化を今に伝える博物館や資料館とともに、木工・織物・刺繍など、現代の工芸品を目にすることができますが、その文化の継承は一部の職人によるものではなく、この土地に暮らす人々にとっても息づいているものでした。
今回の企画展では、代々受け継いできた土地で農業を営む貝澤美和子さん、太一さん親子にご協力をいただき、オヒョウ(ニレの木)の樹皮を編んだ袋状のかご「サラニプ」や、「イタ」と呼ばれるアイヌ文様の彫られた木工品などを製作いただきました。
身近な自然とうまくつきあい、オリパク トゥラノ(遠慮とともに)暮らしてきたアイヌの人々。その文化と伝統は、農作業の合間を縫って製作する品々にも、確実に流れていることが伝わってきます。
その脈々と受け継がれてきたその自然観は、いまの私たちの暮らしにも、多くのヒントを与えてくれるように思うのです。
サラニプは丸みを帯びたシルエット(右)ですが、
ふだん使いしやすいようにアレンジしたもの(左)。
こちらは3種類の手提げかご。
美和子さんが工夫を凝らし製作してくれました。
展示販売できる数は限られますが、二風谷に生きるそれぞれの人の中のアイヌ文化、その価値観をお伝えできればと思っています。
【貝澤美和子さんプロフィール】
熊本県生まれ、高校まで熊本城近くの自宅で暮らす。武蔵野美術大学に入学のため上京。在学中に北海道を旅した際、二風谷で過ごした記憶が忘れられず、大学を中退後に再訪。まもなくご主人となる貝澤耕一さんと出会う。21歳で結婚後は、育児と農場の仕事を続けながら、アイヌの刺繍や文様の研究も行う。アイヌ伝統料理の腕前もみごと!
【貝澤太一さんプロフィール】
1970年、平取町・二風谷で生まれる。大学を卒業後は、アイヌ文化の研究施設に16年間勤務。その後、二風谷に戻り、代々受け継いできた土地で農業を営む。木彫りは主に冬期に行い、地元の仲間たちとともに、アイヌ文化を気軽に体験してもらおうと企画した「シケレペ・キャンプ」も定期的に開催している。