熊本の竹細工探訪

こんにちは。
この週末は、熊本に行ってきました。

今年の1月には、鹿児島・宮崎・大分をめぐり、現地を代表する竹細工の
職人さんたちにお会いしてきました。
九州の東側を海沿いに北上したわけですが、対する西側の熊本県では
どのような文化を持っているのか、ずっと気になっていたのです。

今回は、熊本を代表する三人の職人さんを訪ねてきました。
中でも一番印象的だったのは、天草にほど近い町でかご作りを続けてきた
80歳を越えた職人の方でした。

特筆すべきは、おもに天草の漁師さんのためのかごを作りつつも、
日常の生活のカゴから、工芸品として扱われる百貨店向けの製品まで
幅広く作られていたところです。

花籠を中心に製作活動をしてきた父の影響も受け、親子で別府に滞在する
ことも多かったそうです。たくさんの技法を習得したことが、その後の製作活動に
影響を与えました。

別府ではかごづくりの技術だけでなく、
漆の配合を学んだことも重要だった。
 
これは飯じょうけ。
親戚が集まるときは、いつも使ったそう。
 


使い込まれた厚い手帳には、300種類を超える製品の詳細が記録されていました。
これまで、仕事で訪れる先には、つねにその記録が参考にできるよう、
持ち歩いてきたのだといいます。

漁師さんから求められるのは、サイズや軽さ、耐久性といったことだけ
ではありません。
「捕まえた魚や仕掛けた生餌を、どれだけ長い時間、生かしておくことができるか」
それがもっとも重要な条件でした。

これは車エビ用のかご
 

それには、かごの中で、どれだけ自然に潮が流れるようにするかが、
大切です。
そのために、仕掛ける漁場の潮の流れに応じて、網目の大きさを調節したり、
生き物の体を傷つけないかご作りを心がけたそうです。

「長生きするかご」は、漁師の間でたちまち評判となり、その後は
自らかごを販売する必要がほとんどなかったといいます。

残念ながらここ数年は、体の自由もきかなくなり、往年のようなかご作りは
できなくなってしまいました。
しかし、その考えや技術を学び、いまや愛弟子といえる作り手も
活躍してはじめています。

  

どれも興味深い話しばかりで、気づけば4時間近くを過ごしていました。

「あと10年早く会えれば、あなたのためにかごを作ることができたのに。」
その一言がたいへんありがたく、この旅の一番の思い出となったのでした。

征一郎