鹿児島のおかべかご

こんにちは。

先月末、鹿児島のアラヘアムさんでの展示の際、
すこし足を伸ばして、いつもお世話になっている「おかべかご」の
職人さんを訪ねました。

「おかべ」とは、この土地で豆腐の意味。
昔、豆腐屋さんに買い物に行った際、このかごに入れておけば
帰ってくるころに水が切れている といった具合に、
当時はどこの家庭でもみられた生活のかごでした。

現在では、お弁当かごや裁縫箱などに利用されるお客様が多く、
我が家では子供の行事など、家族用のお弁当かごとして活躍しています。

なんと、この日はちょうど、当店が依頼していた「おかべかご」の製作中!
ここ最近のいろいろな話を伺いつつ、作業の現場を見せていただきました。

こちらが、本体の側面にあたる場所。

 

端正な編み目に浮かび上がる波模様が圧巻です。

これまで培ってきた技術をもとに独自に考案した「升(ます)網代の応用型」
の美しさに目を見張ります。

これを筒状に組み合わせ、円柱型にします。

つぎに枠を取り付けます。

外側用と内側用に、大きさと厚みを変えた竹枠を、
外→内の順で、はめ込んでいきます。

本体には真竹を使いますが、枠には、孟宗竹を使用する場合がほとんど。
孟宗竹は、節の部分のデコボコがよりすくないので
枠作りには向いているのだそうです。

竹を直角に曲げる作業には、今はガスバーナーを使っていますが、
その昔は炭を使用していたため、今より何倍もの時間がかかったそうです。

30年以上前に作ったご自身のおかべかごを見せていただきました。
今なお現役で使える丈夫さと、その存在感に、ただただ見入ってしまいました。

作り手のかたは、この道60年近いキャリアをもつ職人さんです。
師匠の師匠から譲り受けた道具を、今も大事に使用されていました。

よくみると、刃の根本の頻繁につかう箇所は
歯が薄くなっていました
 

残念ながら、今のところ後継者はいないそうです。

この地のおかべかごの伝統が絶えることなく、
この道具たちも、いつか新たな作り手のもとへと旅立つ日がくることを
願わずにいられません。

伊藤征一郎

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