奥会津のまたたびざる

今年も奥会津より、またたびざるが入荷しました!

新潟県との県境にほど近い、福島県の奥会津地方は、豊かな緑と
ゆったりと流れる只見川に囲まれた自然豊かな土地です。

そして冬場は積雪が何メートルにもなる豪雪地帯。
そのきびしい自然環境もあってか、かごの材料として一般的な
「竹」の仲間がほとんど生息していません。
そのため、この地域の屋内外で使用するかごと言えば、「またたび」
の若枝を割いて編んだものが一般的でした。
かつては、長い冬場の手仕事として、どの家庭でも自分たちで
つくるのが普通だったそうです。

またたびざるの産地のひとつ、金山町の場合、極細い材料を緻密に
編んだざるつくりに特徴があります。実際に手で持ってみると軽いものの、
きっちり・しっかりと編まれているそんな印象があります。

そして、その作り手といえばベテランの男性がほとんどですが、
今回入荷したのは、子育て中の女性の手によるもの。
もともとは東京に住んでいましたが、ご主人の仕事の都合により
数年前からこの土地に移り住みました。

そのため、かごづくりをはじめてから、長い時間は経っていないのですが、
地元を代表する名人から手ほどきを受けて、ぐんぐんと上達。
当店では三年目のお付き合いとなりましたが、今後の活躍をとても
期待している作り手のかたです。

丸みを帯びたやさしいシルエットと、ていねいな仕上げが
どことなく女性らしさを印象づけます。

これまで、いろいろな産地に訪れてきましたが、すぐれたざるの作り手
といえば、ずっとその土地で生まれ育ってきた、中高年の男性が
ほとんどでした。

それは、かごを編む行為そのものだけではなく、幼少の頃から
家族の誰かがかごづくりをしていたなど身近な道具であったこと、
また山に入る時間も長く、危険や体力を伴う仕事も多いことも
理由の一つだと思います。

そのような中、別の土地から移り住み、地域の文化に溶け込んでいく
その女性の姿は、とてもかがやいてみえました。
一年で製作いただける数はわずかですが、当店では毎年心待ちに
している製品の一つです。

いとう

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