「つと(苞)」とは、食糧などを藁の束で包んだものを指すことば。
大切なものを保管したり運んだり、丁寧に包んで人に手渡す用途などにも稲藁は大切な役割を果たしてきました。
本品は、日本の「包む文化」の原流ともいえるような「つと」を、うつくしい飾り物として表現した一点です。
後ろ姿もきりりと。
風呂敷などに代表されるように、ものを大切に包む文化が、日本には古くから根付いています。
その発祥と言われる「藁づと」は、身近にあった藁で食料を簡単に包んだのが始まりとされています。
つとは偶然にも納豆を生み出し、その後はお供えをする際の包み(餅などを入れてお供えをする風習)として残ってきました。
「わら細工たくぼ」のつとは、神楽の際に使われたり、日本の包む文化の象徴としてお飾りいただいているもの。
装飾としての用途を考慮し、たっぷりとわらを使って力強く綯い上げた、凛々しい姿の一点です。
【「わら細工たくぼ」のわらのこと】
「わら細工たくぼ」が工房をかまえる宮崎県の高千穂郷は、急峻な山あいに棚田がひろがり、山間地特有の稲作文化が残る地域。
「天の岩戸」の物語の舞台ともいわれる神話ゆかりの地でもあり、注連縄(しめなわ)や、わらのお飾りを大切に飾る風習が残っています。
たくぼさんでは、すべてのわらを自分たちの田んぼで育てています。
平地での稲作に比べると、傾斜地の棚田では、大型の重機が使えないことなどから、多くの人手がかかりますが、たくぼのメンバーが一丸となり、愛情をもって育てています。
すがすがしい緑色のわらは、「青わら」と呼ばれる、特別なわら。
お米が実る前、8月の暑い盛りに刈り取りが行われます。光沢があって美しく、さわやかな芳香をもつ素材となります。
秋には2度目の収穫を行います。
お米を実らせた秋の黄色いわらは、太くて丈夫。稲穂や根っこを利用したお飾りや、鍋敷きなどの生活道具に使用する素材となります。
乾燥後のわらは、上質な部分だけを選りすぐり、部位ごとに切りそろえていきます。制作前の下準備だけでも、何段階もの作業があります。
わら細工たくぼの活動は、この地域に伝わる伝統をつなぐとともに、地元に雇用や世代間の交流の場をつくり、次世代に棚田のある風景を残していくことにもつながっています。
「綯い」や「結び」の文化をたしかに受け継いだ、力強く美しいお飾り。古くてあたらしい たくぼのわら細工は、時と場所を選ばず、長く寄り添ってくれる暮らしのお供です。
◎ 作り手インタビュー「
わら細工と生きる」
(現地の写真はすべて 川しまゆうこ さん)
- 本品は天然の植物を利用した手作りの製品です。多少の折れや割れ、色ムラ等が見られる場合がございます。 天然素材の製品の性質としてご理解ください。また大きさや仕上がりの形状は一点ずつわずかに差がございます。表示のサイズは目安とお考えください。
(色むらの例)
- 製品の色合いは、時間とともに、作りたての緑から茶色へと徐々に変化していきます。
- 乾燥した、風通しのよい場所で保管ください。また直射日光は変色の原因となりますのでご注意ください。