
イギリス中部。緑ゆたかな湖水地方に受けつがれてきた伝統のかご「スウィル・バスケット」です。
イギリスを代表する国の木でもあるオークを主素材に、縁や持ち手にはヘーゼルの枝を組み合わせて作られるとても丈夫なかご。
数百年にわたる歴史をもつという、舟型の凛々しいかごは、かつては農園や港や工場、そして家庭内での日々の作業まで、あらゆる場面で活躍し、湖水地方の景観の一部となってきました。
作り手は、オーウェン・ジョーンズさん。
往年を知る職人から1980年代に技を受け継ぎ、今も専業で制作をつづけている正統派のスウィラー(スウィル職人)です。

本体にはオークのへぎ材、持ち手とフレームにはヘーゼルの枝を使用しています。

オーク材は、大きな薪窯で加熱したのちに、年輪に沿って剥ぎ、うすいへぎ材にします。
ボイルする過程で、材のところどころが灰色~黒に染まるのが、他にはみられない特徴の一つ。
オークに含まれるタンニン成分が、鉄の窯と反応することによってうまれる鉄媒染で、素材の一部が光沢をおびた渋い銀色に変化します。
出来立てのスウィルが すでにまとっている貫禄とビンテージ感は、
この過程によって生みだされています。
縦横に重なりあうオークの編み材には、一本一本名前がつけられています。
かごのどの部分に使うかによって、それぞれ決まった厚みと長さ・形に
削り上げる必要があり、その習熟には4、5年はかかるといわれるそう。
イギリスを代表するかご文化の一つといえるスウィル・バスケット。
おだやかなお人柄で、熟練の技と歴史を今に伝える オーウェンさんの手による一点です。

作者による刻印が入っています。
|湖水地方のオーウェンさん|
ロンドンから北へ約450キロ。湖水地方は、氷河期に作られた渓谷に、大小無数の湖が点在する風光明媚な土地です。
古民家をご自身で手入れしたという、オーウェンさんのかわいらしいお家と工房は、小さな駅から車で20分ほど走った、湖のほとりにたたずんでいました。
工房の回りには、素材のオークやヘーゼルのストックが所せましと並べられています。

「削り馬」にまたがり、編み材を成型するオーウェンさん。一本一本の性質を見きわめながら、指先の感覚をたよりに仕上げていきます。

ヘーゼルのフレームに、オークの編み材を固定していきます。
一本のオークが手に入っても、かご作りに利用できるのはほんの一部分だけ。残りの部分をどう無駄なく使うかにも、心をくだいているとオーウェンさんは話します。
大きな材は、割って門や柵の材料に。樹皮は、革のタンニンなめしの原料となるため、皮革工房に送り出しているそう。
夏になると森の中で炭焼きをし、燃料として使うことで、全ては自然へと帰っていきます。
オーウェンさんの仕事と暮らしをひと言で表現するならば「循環」。その言葉に尽きるのではないかと、訪問を終えて感じました。

裏手の菜園では、様々な野菜や果物を育てているそう。養蜂用の巣箱もありました。
◎イギリス 木かごを巡る旅(ブログ)
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