かご小話(27) : 用の美

今日は、工芸品に関してしばしば引き合いに出される
「用の美」という言葉をあらためて振り返ってみたいと思います。
ご存知の通り、「用の美」とは、暮らしの中の実用のために
作られた道具が、おのずと備えている美しさといった意味です。
もともとは、「民藝」という言葉を最初に使った思想家の柳宗悦
(やなぎ むねよし)が、大正中期~昭和にかけて、
それまで顧みられることのなかった民衆の工芸品の中に見出した
新しい美の価値観をさしました。
時代は流れ、当時日常的に使われていた道具たちはすべて近代的な
ものに取って変わられ、廃れていきます。
“用”がなくなってしまったときに、道具とその“用の美”が
生き残る道は?
一つは、純粋に美術品としてその形を残していく道。
もう一つは、新たな“用”を発見するという道でしょうか。
古い道具で、今日まで作られ続けているのは、
このどちらかの道を見出すことができたものだけのように思われます。
たとえば宮城の肥料かごにしても、今、実際に畑に肥料を撒くという
用途で使う方はごくごく僅かではないでしょうか。
現代のくらしの中の様々な需要に応えてくれる便利なかごだからこそ、
今もなお作られ続けるのでしょう。
消えゆくのが惜しまれる美しい手仕事の道具たちは、
日本だけでなく世界中に存在しています。それらを伝え生かすには、
新たな役割を見出してあげること、それが一番なのではないかと思います。