かご小話(32) : 恵みの樹、あけび

日本では本州の山里に広く自生するあけび。
子どものときに、里山で遊んでいる途中であけびの実を見つけて、
その場でかぶりついた思い出をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

その紫色の甘い果実は昔から人びとに親しまれてきました。
旅人があけびを食べて疲れをとった、というくらい元気の出る食べ物として
好まれていたそうです。

そんな栄養たっぷりのあけびですが、蔓 (つる) の部分も古い時代から、
かごの素材に大活躍。特に東北地方では上質の素材が取れるため、
あけび細工が盛んに行われてきました。

どのかごでもそうですが、よい素材を見つけることが、かご作りの第一歩。
どんなに腕の良い職人さんでも、よい蔓が見つからなければ、よいかごは
作れません。しかし近ごろは、良質のあけび蔓が採りづらくなっているという
嘆きがあちこちから聞こえてきます。

山里が減り、多くの山が荒れてきていること、そしてどうやら気候の変化も
影響しているようです。作り手の方たちは、より山の奥へ奥へと入って
いかなければならず、材料採りにかかる労力も増えています。

かごの素材は、すべて自然からの恵み。
その種類の多さは、率直に自然の豊かさを反映しているようです。
かごの多様性、もっと注目していきたいと思います。